自治体というコミュニティを育てる

2020年11月は、アメリカの大統領選が注目されていますが、ここ八ヶ岳南麓の山梨県北杜市もまた、大事な市長選が差し迫っています。

ここ最近、全国の移住人気ランキングで3本の指に入る超人気の高原都市である北杜市。

豊かな大自然に個性豊かで意識の高い人々が多く、都心へのアクセスも抜群なことから、コロナ禍以降、ますます注目度が高まっている自治体なだけに、誰が市長となるかは、とても重要なタイミングです。

これまで

「政治に期待するよりも自分たちで」

というスタンスで、事業を通して地域活動や社会活動に取り組んできましたが、個人的な感覚としては、これから先は、もう官民すべてが一体となり、新たな社会創造をする時期であり、珍しく選挙にかなり関心を持ち、毎週候補者の方々のお話を直接聴きに行っています。

無理に頑張って「個」で動くよりも、それぞれ役割に分かれて協力し合うことが、これからの「繋がりの時代」に大切であるし、また色々な意味で“時間がない”のも正直なところ。

4名の候補者のうち、半数が若い世代の候補者であり、とても感覚や向かっている方向性が近いものを感じるので、是非とも八ヶ岳の政治も若い世代にバトンタッチされることを願っております。

自分自身、政治に出ることはありませんが、間も無く出版されるコミュニティ論を語った新刊本「宇宙学校 アースリングコミュニティ」の中で、これから先の自治体のあり方についても書いてあります。

八ヶ岳も、こんなコミュニティ自治体となることを目指して行けたら。

以下、転載。

【自治体というコミュニティを育てる】

宇宙から見れば、地球は1つのコミュニティ。

地球を見れば、今は196カ国のコミュニティ連合体。

日本という国も1つのコミュニティということになりますが、日本もより細かく見れば 都道府県のコミュニティ連合体。

さらにもっと細かく見ると、全国1741箇所の市区町村自治体というコミュ ニティに分かれていると言えます。

自分たちがこの日本で近い将来、理想的なコミュニティを作っていくことを考えていく時、ダマヌールのような仕組みであれば、シェアハウスを上手に活用すること等で民間規模でも少しずつ実現していけるかもしれません。 

しかし、民間で作れる規模には現状どうしても限界があり、もし日本の中でキブツほどの規模のコミュニティを目指すとすれば、今現在存在しているコミュニティである市区町村の自治体を育てていくというのが、案外近道になるのではないかと思われます。

すでに始まっているとも言われている超少子高齢化の時代、人口が激減していく日本において、各地方自治体は人口の流出を必死に防ぐとともに、外部からの移住者を集めることにも一生懸命になっています。

それこそ、日本のすべての地方自治体の最重要課題として、どの世代にとっても暮らしやすく、誰もが移住したくなるような魅力的な町になりたい、ならなければならないと考えているのです。

そんな流れの中で、もしもキブツのような町へと変貌を遂げる自治体が現れたら、きっと大反響となって移住者が殺到するに違いありません。

その自治体に暮らせば、生活保障がされるだけでなく、安心安全な衣食住、 エネルギーや医療、充実した福祉や教育を享受することができます。

耕作放棄地はすべて自治体が管理して自然農を推奨するだけでなく、出来上がった農産物はすべて自治体が買い上げることで農家の雇用も保障。

地産地消によって自治体の小中学校の給食にはすべて自然栽培の地元食材を使い、余った農産物は市場などで地元住民に格安で還元提供します。

水は山からの湧水を引き込み、塩素は入れずに水道の蛇口をひねれば天然水が出てくるようにして、水道料金もすべて無料。

負の遺産として、田舎の山々や森の中に広がってしまったメガソーラー発電も自治体がすべて買い上げて管理し、そこから得た電力を市民に還元していきます。

もちろん、将来的なことも考えて自然エネルギー自給に取り組み、電気 代金も無料または格安とします。

山や森の管理も自治体が主導して、間伐を施して山を守りながら、間伐材を活用してバイオマス発電やエネルギーに再利用し、特区としての大麻栽培免許も自治体が取得して、大麻産業を主幹の事業として日本全国、世界にまで輸出できるようにしたいものです。

幼稚園や保育園、学校関係の教育費はすべて無料にするだけでなく、今後さらに増加するであろう一般の学校に通えない子供たちのためにも独自のフリースクールのような受け皿を自治体が構築していきます。

そこでは、通常の学校教育とたとえば自然農とを組み合わせ、小中学生でも学校に行かない代わりに農作業の業務に携わる体験をする。

自然の中で土に触れながら命の循環を学び、一方でまた農作業を通して働くこと、生きることの術を身に付け、早くから自立する力を養う。

その他、将来IT社会がますます進展していくことを見据え、小中学校では 教えてもらえない高度なIT技術を専門家を招いて学び、世界最先端のIT能力も身につける。

ダマヌールのような共同シェアハウスも自治体が準備していき、農園カフェのような食事ができる場所も各地に作り、自然栽培農園で採れた食材を料理が好きな担当者が調理し、近隣の母子家庭や病気、障がいを持った方々にこそ優先的に、安心安全で栄養価の高い食事を届けられるような環境を整える。

キブツの考えにある育児等の効率化をさらに発展させ、それぞれの世帯ごとにバラバラで、あるいは一人でご飯を食べるよりも、集団で食事を取るようにする。

効率が良いことはもちろん、子供は子供同士、母親は母親同士でのコミュ ニケーションも盛んになり、時には小さい子供とお年寄りなど、世代も超えてお互いにとって刺激的な交流の場にもなる。

これまで個々人の問題として捉えられ、あまり公の場では語られてこなかった、正しい性教育も含めた男女のパートナーシップ、新しい時代の結婚のあり方といったことに対する学びと構築に、地域として積極的に取り組んでいく。

また、出産から家庭での育児や老人介護、病院もまた自然医療も取り入れた 統合医療クリニックを増やして総合的な支援を行い、まさに「ゆりかごから墓場まで」、この自治体に入りさえすれば、どこに行かなくても生涯にわたって安心安全な生活が送れる。

自治体に所属する皆が仲間であり家族のような関係で、それぞれが得意分野に特化した役割を分担し、そこに資本主義社会にみられるような報酬の多寡や貴賤を設けることなくお互いに感謝しあう……。

このような、自分ができることで人や社会の役に立ち、自然も人の交流もすべてが循環の中にあるような自治体があったなら、きっと日本全国どころか、世界中から人が殺到してくることでしょう。

今の資本主義社会の様々なしがらみを考えると、まるで夢物語のように聞こえるかもしれません。

しかし、そんなこれまでの歪んだ社会構造の結果として過疎化が進み存続が危ぶまれているような人口の少ない村などは、トップである村長主導で動いていけば、実は完全自給自足する地域コミュニティへと変貌するチャンスに満ち溢れています。

実際、先に挙げた項目が部分的にでも採用されている自治体も出てきており、遠くない将来、そういった村や町、市や区が日本の中にも出てくるかもしれません。

「宇宙学校 アースリングコミュニティ」《第5章 アースリングコミュニティと宇宙学校》より転載

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