「できる職人」ではなく「できた職人」を育てる秋山木工

秋山木工といえば、知る人ぞ知る日本トップクラスの技術力を誇る家具会社です。
 
迎賓館、国会議事堂、宮内庁、高級ホテルなどなど、そうそうたる場所に、その家具が収められているほど。
 
そして、秋山木工には、日本一とも言える独自の教育システムがあり、若き職人が参加する技能五輪全国大会、つまりは職人のオリンピックにおいて、金銀銅メダルを秋山木工が総なめするほど、一流の職人の宝庫となっています。
 
これには、秋山木工が創業以来続けている
 
「丁稚(でっち)」
 
という職人養成のシステムがあります。
 
丁稚は師匠のもとに住み込みで従事する弟子職人のこと。
 
秋山木工には、独自の8年間人材教育のプログラムがあり
 
1年目:丁稚見習い
2年目〜5年目:丁稚
6年目〜8年目:職人
 
となっていて、職人として認めらる前に、丁稚としての修行期間が5年間もあります。
 
1年目は、見習いとして秋山学校に入り、全員男性も女性も丸坊主。
 
親元を離れ共同生活をし、恋愛も携帯電話も禁止。親へは直筆の手紙のみ、親に会えるのも、お盆と正月のみ。
 
朝5時から起きて2kmのマラソンから始まり、食事の準備、近隣の掃除などもあってから修行の始まり。それも夜遅くまで。
 
お寺よりも厳しい環境ではありますが、ここで修行を積んだ職人は、他とは比較にならないほど成長し、だからこそ職人のオリンピックで必ず上位に入るほど人材が育ちます。
 
そんな一流職人を8年かけて育て上げたところで、なんと全員事実上のクビとなります。
 
秋山木工では、8年の修行が終わると、次は独立することになるのです。
 
一番油が乗って、会社にいれば百人力の貴重な人財をあえて外に出す。
 
せっかくの職人として伸び盛りの時に自分のところで抱えておくのはもったいなく、外の世界でさらに学んで欲しいと。
 
自分のこと、自分の会社のことしか考えない社長・親方では、とてもできない徹底した利他の信念で、職人の経験のため、日本の技術のため、秋山木工は、優秀な人財を次から次に世の中に輩出します。
 
そんな秋山木工を創業し、50年もの間、こういった取り組みを継続しているのが、秋山利輝社長。
 
30年以上も前にイスラエルにも訪問し、ヤマト・ユダヤ友好協会の場でご挨拶させて頂いたのをきっかけに、先日に秋山社長のもとを訪問させて頂きました。
 
小学生から中学生までの9年間、ずっと全部の教科がオール1だったという秋山社長。
 
1人の先生とかではなく、どの先生からも評価は「1」であり、学校をサボっていたどころか、9年間1度も休まず唯一の皆勤賞なのに。
 
勉強だけでなく運動もまったくダメで、跳び箱も中学生まで一番低いのも飛べなかったとか。
 
自分の名前を漢字で書けるようになったのは中学校2年生。
 
そんな秋山社長自ら、丁稚として職人の世界へ飛び込み、1日を72時間という心構えで徹底的に修行して働き続けたそうです。
 
こうして若くして職人としても認められて高収入を得るほどになり、そして27歳で独立、現在は78歳としても現役で元気に活躍されています。
 
プライベートでもおもてなしの心遣いが半端ではなく、とても有り難く、貴重な時間を過ごさせて頂きました。