シュタイナーコミュニティであるキブツ・ハルドゥフ(kibbutz harduf)

シュタイナーコミュニティであるキブツ・ハルドゥフ(kibbutz harduf)。

イスラエルといえば、教会を巡るツアーが一般的ですが、やつはイスラエルツアーは、教会だけでなくキブツも巡るのが特徴の1つ。

むしろキブツを目的として訪問する日本人グループなど、ほぼ存在しないので極めて珍しいもの。

キブツ(kibbutz)とは、ヘブライ語で共同体。コミュニティを示すもの。

その歴史は100年以上もあり、イスラエル建国が1948年なので、国家再建よりも昔から存在していた独特のユダヤ人コミュニティです。

大小様々、個性も様々なキブツが、イスラエル全土に約300箇所存在しており、1つのコミュニティは100名〜1000名以上まで多種多様。

キブツといえば

「共産主義」

のイメージが強く、メンバー全員が私有財産を持たず、すべてを共有する概念がベースにあることが知られている。

コミュニティに入るときは一文なしの人も大富豪も自分の資産をキブツに預ける。

これだけ聞くと、どこぞの新興宗教の資金集めのように思えますが、昔のユダヤ人は国もなく資産もなく、お金集めというよりも、みんなであらゆる力を集結させて、共に生きていく助け合いの環境を作ることが目的。

だから、共有の概念は、財産だけでなく、その人の能力や個性すべてもシェア。

「ヴァイオリンが上手な人がいたら、その能力もキブツの持つ財産」
「数学に長けた天才がいれば、その頭脳もキブツの叡智」

お金はごく一部であり、個は全体であり、全体は個であることを実践していたのが古くからのキブツ。

村の子はみんなの子。誰かの問題は私の問題。

古き良き、昔の日本も同じような価値観は集落や地域ごとにあったと思います。

今、このような古典的キブツは、全体の1割30箇所ほどに減ってしまい、資本主義の流れが入って格差も生まれた、近代キブツがコミュニティの主流。

それの良し悪しはなく、時代の流れと共にキブツも変化せざるをえないのが実情ですが、ベースにあるのはどこも助け合いの精神。

今回のツアーも4つほどのキブツを見学しますが、最初に訪れたキブツは

「キブツ・ハルドゥフ(kibbutz harduf)」

というコミュニティであり、ここはまだ40年の歴史しかない”若いキブツ”と呼ばれています。

100年以上の長老キブツも多い中では、40年はまだまだ若いとか。

若さゆえに、このキブツの最大の特徴は、発祥当時から、ベースにあるのが

「ルドルフ・シュタイナーの人智学」

であり、300箇所あるキブツの中でも珍しい完全シュタイナーキブツであること。

保育園から学校、農業から建築、ガーデニングからコミュニティの思想のすべてまで、シュタイナーのスピリチュアル叡智が注ぎ込まれて運営されています。

保育園の園舎も自然素材の建造物で曲線美がとても美しく、脳にも刺激あるもの。

建物の色も子供に優しく癒しを与えたり、もちろん電子機器は置かず、布製品もおもちゃもすべて自然素材。

農業は有名なバイオダイナミック農法のオーガニックですベてやっており、酪農の飼料もオーガニック飼料なので、ミルクもオーガニック。

コミュニティ内の市場には、いつも新鮮な野菜や果物があり、他のキブツから取り寄せている作物もありますが、それらもすべてオーガニック。

何より素晴らしいのが、キブツのメンバーは900人ほどいるのですが、その25%ほどの200名以上が、様々な障害や疾患を持っていたり、キブツで彼らの自立支援やサポートを政府とタイアップしながら取り組んでいること。

事情があって、両親から引き離された子供たちなども70人ほど抱えて育てています。

また精神障害を患った人々も積極的に受け入れており、その方々を癒しながらも自分と向き合い、最終的に自立できるような3年プログラムも長い間実践してノウハウを積んでいます。

一緒に農業を取り組んだり、陶芸作品を作ったり、機織りをしたり…安心・安全で健康的な食材と料理を食べて自分を取り戻す。

*農業
*陶芸 
*機織り

この辺は、キブツ八ヶ岳も活動しているプロジェクトが被っているので、とても参考になります。

キブツ八ヶ岳も、遠くない将来に体制が整えば、身体障害、知的障害、精神障害を持った方々、孤児などを積極的に受け入れ、共に生活や仕事をしながら助け合っていきたいもの。

ただただ

「お世話する方とされる方」

の関係ではなく、出来ること、出来ないことの役割分担の中で、それぞれの個性が最大限に発揮され、双方の刺激と学びになれば。

お金や生産性を基準の世界では、人と当たり前に同じことができないと、様々なハンディを抱えた人は”お荷物”として評価されてしまう。

その人の意識、精神性、存在の本質的な部分を無視されて、使えるか、使えないかの社会。

表面的な福祉で、弱者救済を謳いながらも、そういった方々をただ社会から隔離して、形式的な自立支援のサポートをしても、それだけでは少し違うとも感じる。

キブツ・ハルドゥフは、単純に隔離するのではなく、健常者と呼ばれる人も関係なく、共に接しながら社会を創っているスタンスが素晴らしいと感じました。

「健常者なんていない、誰もが浮き沈みがあり、何かしらの問題を抱えているものだ」

と、コミュニティマネージャーが伝えていたのも印象的でした。

出来れば中長期的に滞在しながら学びを深めたい素晴らしいキブツ。

戦争ばっかりやっている国ではない、イスラエルの様々な一面は、実際に現地訪れないとわからないもの。

魂を辿るイスラエルの旅、まずはガリラヤ湖へ。